インディアナポリス・ロードコースのセッティングの極意






第5戦インディアナポリスGPの舞台はインディアナポリス・モータースピードウェイ(IMS)のオーバルトラックとインフィールドのロードコースを組み合わせた1周は2.439マイル(3.92km)、14のターン(左5、右9)のコース。レーストラックはほぼフラットで、2,869フィート(875m)ものフロントストレートがあります。







決勝レースは85周(207.315マイル=334㎞)で、予選記録では2017年にウィル・パワーが記録した129.687マイル(1分7.7044秒)となっています。

このIMSロードコースのセッティングについて、メイヤーシャンクレーシングでシモン・パジェノーを担当するギャレット・マザーセッドに話を聞きます。マザーセッドは、2017年のインディ500では佐藤琢磨選手のエンジニアを担当していました。

【IMSロードコースへ向けての事前準備は?】
直後にインディ500を控えていることもあって、通常のレースよりもさらに早い段階で作業を行う必要があります。インディ500に向けての作業は膨大で様々な作業が発生しインディGPの準備中にも同時並行で作業することがあります。IMSロードコースでは年に2回のレースがありますが、気候的には5月は涼しく、8月は暑いのでコンディションが大きく変わります。5月のレースでは、タイヤにはさほど厳しい状況ではなく、作戦的には柔軟に対応することができます。ただし、昨年のように5月は天候不順で一転ウェットコンディションになると非常にチャレンジングになります。

【IMSロードコースのセッティングの特徴は?】
IMSロードコースには、いくつかの特徴があります。その1つは、他の多くのロードコースに比べて、ラップタイムがストレートの速度とブレーキングに大きく影響されることです。ストレートエンドでのブレーキング中の安定した挙動が重要ですが、他のコーナーにおいて求められるバランスとの妥協が必要となります。IMSは平坦なトラックなので、起伏の激しいバーバー・モータースポーツパークやミッドオハイオ・スポーツカーコースよりも、少し攻めたセットアップを施すことができます。特に、5月のレースは、8月のIMSロードのレースよりもそういった傾向があります。

【非常にスムースな路面ですが、脚回りはどうしますか?】
ライドハイト(車高)の基本的な部分に注意を払い、ダウンフォースをどのように得るか突き詰めていくことが重要です。路面が滑らかなので、大きなダウンフォースでレースカーを路面に押し付けることが容易になります。

【ストレート速度を稼ぐのに重要なことは?】
ストレート速度を稼ぐために、私たちは様々なトライを行いっています。5月のインディアナポリスは風向きが非常に変わりやすく、ストレートに沿った南北方向の風が吹くと、最適なギア比を見つけるために多くの時間を費やす必要があります。

【メカニカルグリップとダウンフォースのバランスは?】
ダウンフォースだけではなく、メカニカルグリップとの両方のバランスが必要です。サーキットにはさまざまな要素があります。ターン14とターン4は共にダウンフォースに大きく依存していて、その他のほとんどのブレーキングもダウンフォースに依存いるため、エアログリップに注目しなければなりませんが、同時にメカニカルグリップも調整する必要があります。夏のレースは気温が高くて空気密度が下がり、ダウンフォース量が減るためにメカニカルグリップより必要になります。5月のレースでは、基本的インディアナポリス気温は低めで涼しいので、空気密度も大きくなり、メカニカルグリップよりもエアログリップに頼ることができます。

【フロントストレートエンド以外で大事なところはありますか?】
バックストレートの終わりにあるターン7でのブレーキングは常に大きな課題です。ターン7からターン10までのシケインセクションの走りは、大きくラップタイムに影響します。いいラインで走り抜けられればタイムを稼げますが、特に摩耗したタイヤで走ると、ターン14が問題になります。彼タイヤが減ってくるとドライバーからの注文が途端に増えますね。

【IMSロードとスーパースピードウェイで共通することはありますか?】
年間でオーバルレースが多かった時代から、スーパースピードウェイやショートオーバルから学んだことがたくさんあります。そこで得た多くの教訓は、ロードコースパッケージにも引き継がれ、IMSロードコースやロードアメリカなどで生かされています。

【5月と8月のレースで一番大きく変える所はどこですか?】
8月は走行セッションが時間的に限られるので、8月向けに完全に異なるセッティングをしたとしても、動作を確認する時間がありません。なので、5月のものをベースに数多くの微妙な変更を行う必要があります。

【路面状況は週末を通じてよくなっていきますか?】
週末を通じて路面のグリップはかなり向上します。 しかし、ミッドオハイオなどの自然の地形のロードコースほどラップタイムへの影響は劇的ではありません。ミッドオハイオなどでは、グリップが増えると、ラップタイムが急激に上昇します。インディのロードコースはそこまで劇的ではありませんが、かなりの量のラバーが蓄積されつづけ、ラップタイムは向上し続けます。8月のレースでは、他のレースシリーズのタイヤラバーが混ざるため、良い状態とは言えません。しかし、5月のレースでは、週末を通じてグリップが向上し続け、グリップがピークに達するのはレースの半ばぐらいだと思います。予選開始までに、路面状況が大幅に変化していることもあって、的確に対応する必要があります。

【パジェノーはどのようなセッティングを好みますか?】
彼はテクニカルなドライバーであり、自分の好みのバランスについてこだわりが強いドライバーです。彼はわりとアンダーステアを好みますが、必ずしもそうとは限らないこともあります。適応能力が高く、レーストラック毎になにが必要なのかをよく理解しています。そのため、ハンドリングバランスをどちらか極端にすることはなく、リアの安定性を高めてアグレッシブに走るスタイルでです。IMSのロードコースはそのようなスタイルが向いていると思います。




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