2018シーズン、インディカーは新しい時代を迎えた。
参戦コストを下げつつ、レースをよりエキサイティングにする目的で、レースカーのダウンフォースがこれまでの3分の2になった。
多くのレースシリーズではダウンフォースを増やしてはトラックレコードの更新やコーナーリング速度の高さを謳いあげる中で、それは世界のレースカーのトレンドに逆行する流れだった。
その結果、ラップタイムは軒並み2秒ほどダウンして、オーバルでは2マイルほどスピードダウンした。でも、見た目で速度の違いはほとんどわからなかった。
ダウンフォースを大幅に減らしたために、コーナーリング速度は下がったものの、逆にドラッグも減少してストレートエンドでのトップスピードはこれまでよりも高くなった。
その結果、ブレーキング距離と速度差がこれまで以上に増えた。ブレーキングポイントはこれまでよりも30mほど手前になったと言う。
つまり、ドライバーの仕事量がこれまでよりも増え、その仕事内容が外から見てもわかりやすいものになった。ドライバーがミスする確率も高くなり、順位争いはこれまで以上に激しいものとなった。
空力バランスも大幅に変更されて、重心が1.6%も前に移動した。これまでのデータシートは紙くず同然となった。
シーズン序盤は各チームともセットアップに苦労が見られたものの、シーズン中盤以降はレースでは目に見えてパッシングや接近戦が増加した。
”抜けない””つまらない”と評判だったミッドオハイオではこれまでにない順位変動があって、最後尾24位スタートだったブルデイはノーコーションのレースで6位フィニッシュするという離れ業をやってのけた。
オーバルでは各チームはだいぶ苦労したものの、アイオワやゲートウェイではスリーワイドやアウトサイドパスなどがそこかしこで展開された。
さらにセッティングデータが蓄積される2019シーズンはこれまで以上にバトルが展開されることは間違いない。
そんな中で、元F1チャンピオンのフェルナンド・アロンソが本気でインディカー参戦を狙ってきた。
ホンダエンジンを使用するアンドレッティと組んでのフル参戦を狙っていたであろうことは疑いの余地はないが、最終的にはシボレーエンジンでインディ500の参戦のみが発表された。
アロンソは史上2人目のトリプルクラウン(モナコGP,ルマン24時間レース、インディ500全制覇)を狙ってきている。
もし今年のインディ500を制してトリプルクラウンを達成できれば1972年以来、47年ぶりの快挙となるが、2017年インディ500でのアロンソの走りを見てもその可能性は決して低くは無い。
世界中のレースファンの注目が集まるその時には、”夢のパワー”をアロンソに与えたのは”ボウタイマーク”だったということが歴史に刻まれる。