思い切ってダウンフォースを削減してみれば②



JRヒルデブランドがインディカーでのダウンフォース(DF)に関する興味深い記事(3部作)を寄稿して以下のように考察しています。その第2回です。

http://www.indycar.com/News/2016/07/07-05-Voices-Downforce-Part-2
要約すると以下の通りです。

■ロードコースではトラクションが重要
加速とブレーキングを繰り返し、セクターごとのスピードにバラつきがあるのがロードコースの特徴で、各セクターごとにタイムを詰める作業が必要となる。

■ロードコースではコーナーリング速度に影響
ダウンフォース(ドラッグ)の増減はコーナーリングに大きな影響を及ぼす。ブレーキングとコーナーリングでは速度が落ちるが直線ではスピードアップする。

■ロードとオーバルではDFの影響が異なる
ロードではセクターごとの加速減速の繰り返しだがオーバルではすべてがコーナリング中だという考え方。しかもコーナー半径は大きくロードコースのコーナーーリング速度よりも速い。そのために1周を通してのDFの増減はロードに比べてはるかに少ない。

■フェニックスでのエアロの影響
Hカストロネベスのポールスピードは2周の平均タイムで19秒13。決勝用のDFは50周以上走ることを考慮して5500ポンド(2495㎏)に設定されるが、2周単独走行の予選ではドライバーがぎりぎり全開走行ができる4000ポンド(1814kg)まで減らされる。

■DFを減らした影響
ソノマでDFを40%削減するとラップタイムは2秒遅くなる。これは2.6%の増加となる。フェニックスで予選DFを25%削減するとラップタイムは3秒遅くなる。これは15.5%の増加に相当する。このロスをパワーで補うためにはエンジン出力を2倍にする必要がある。

■JRの考える結論①
単純にDFを削減すれば全開走行は不可能になる。

■JRの考える結論②
わずかなDF削減でもラップタイムには大きく影響する。

■JRの考える結論③
バランスよくDFを削減することに大きな可能性がある。

■現状のインディカーは最適セッティングの幅が狭い
現状のインディカーの速度はスペック上限界の速度域に達し悪影響が出始めている。そのためにセッティングを外した場合のパフォーマンスは急激に悪化する。フェニックスでのDFを3000ポンドにした場合はただスピードが遅くなるだけではなく、ドライバビリティも悪化し、コーナーリング中にレースカーはスライドし挙動は大きく乱れる。

■インディカーの特性
現状のインディカーはオーバルでは十分なDFがないとピーキーな特性となり、ウォールの餌食になりやすくなる。

■一方で見ごたえは増える
上記の結果、言うことを聞かないレースカーをコントロールするというドライバーのアクションが可視化されることになる。これはレース観戦の醍醐味である。

■メカニカルグリップ
DFに頼らずにタイヤを正しく接地させるためにはタイヤのコンパウンドとコンストラクションに適切な設定のショック、スプリング、アンチロールバーを使用してロールセンター、キャンバー、トーなどを適正にする必要がある。4輪のタイヤの設置状態を適正化するこれらのセッティング作業は極めて重要。

■チームの作業
最大限にメカニカルグリップを得るためのセッティング作業には各チームは最大限に時間を割いている。その結果、メカニカルグリップの最適化に関しては限界に近づいている。

■タイヤの性能
ファイアストン製のタイヤは各コースごとに適正化されているため、タイヤの特性を見極めることが非常に重要になっている。

今週末にショートオーバルで行われるアイオワ300.これらの状況を踏まえて観戦すればオーバルレースの奥深さがよりはっきりと見えてくるかもしれません。

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