レーサー鹿島さん、インディライツデビューまでを振り返る⑧

いよいよ最終回。記憶もだいぶあいまいになってきました。
なので、当時の決勝リリースをベースにお送りします。
2004 インフィニティプロシリーズ 第11戦 カリフォルニア100
レーサー鹿島 決勝リリース
「上位争いを展開するものアクシデントで13位」

10月2日 カリフォルニア州フォンタナ  カリフォルニア・スピードウェイ
アメリカ最高峰レースシリーズ、インディカーシリーズのステップアップカテゴリーに位置するメナード・インフィニティプロシリーズに初めての日本人ドライバーとして参戦を開始したレーサー鹿島(CAR No.5サムシュミット・モータースポーツ所属)は、現地2日土曜日午後に行われた決勝レースで4番手からスタート。


気温27度、路面温度34度、カリフォルニア独特の強い日差しと乾いた空気の中で行われた決勝レースは日もやや西に傾いた午後4時半にスタート。


2列目アウトサイドスタートだったレーサー鹿島は、チームからの無線指示により当初予定の2速ギアスタートから3速ギアでのスタートへ変更したため、スピードが十分にのせられないままでローリングスタートをむかえ7番手に後退。

このレースでの最大のライバルはモーナンレーシングからエントリーしているPJチェソンとジェイムス・チェソンの兄弟。ともにダートオーバルの出身で兄のPJチェソン(写真左)はシーズン半ばで3連勝を挙げてブイブイ言わせていた。


弟のジェイムスもこのひとつ前のレースでデビューして6位フィニッシュとその才能をみせていた。
鹿島さんはレース序盤はこのチェソン兄弟(後ろの赤いレースカー)と激しいつばぜり合いを演じる。


今回はスポッター(走行ラインなどをチェックする司令塔役)をインディカードライバーでレーサー鹿島の親友であるロジャー安川が担当。豊富なレース経験を基にした走行ラインやレース状況のアドバイスはかなり大きなアシストにもなっていた。


レースも中盤となる20周過ぎ、5番手との差がやや開き始めたが、後続の2台を先に行かせて、そのドラフト(スリップストリーム)を利用することによりペースアップ。ついにはトップ集団の塊のすぐ後ろにまで追いつく。


この間にレーサー鹿島は後半の勝負所で大事となるコースの一番の大外を安定して走れるハンドリングにレースカーを再調整すべく、あえて大外のラインを走るようにして車高やスウェイバー(スタビライザー)の調整を行い来るべき勝負所に備えていた。

28周目にトップ争いをしていた1台がスピン。そのレースカーの排除のためにイエローフラッグが出され、ペースカー先導でのスロー走行となった。この間は速度が下がりタイヤ温度が急激に下がるために各車ハンドルを左右に切って蛇行して温度低下を極力防ぐようにするが、この時にレーサー鹿島はバランスを崩して外壁に接触。これでサスペンションアームを壊してしまいレースを終えることになった。

オーバル専用のマシンは左回り専用でサスペンションが左右非対称になっているために、右に曲がることを想定されていない。そのために大きく右にハンドルを切ってしまうと突如バランスを大きく乱してしまう特性がある。

ロードコース出身のレーサー鹿島にはこの特性に対する経験が全くなく、オーバルコースでのペースカー走行も初めての経験だったため、チームの誰もがケアしていなかったアクシデントに見舞われた。
結果的には満足な成績を残すことができなかったが、わずか2日間だけの走行期間に経験豊富なトップコンテンダーたちと互角に勝負できる走りを披露し、速さと安定性を見せ付けることができたデビュー戦であった。

レースはずっと共にバトルを展開したジェイムス・チェソン(弟)がデビュー2レース目で初優勝。なぜか兄のPJチェソンもビクトリーレーンに乱入して調子に乗りまくってブイブイ言わしていました。


【レーサー鹿島のコメント】 今週末の2日間はこれまでのレースキャリアの中で今までに経験したことが無いほどの大きな収穫がありました。セッション3番手や予選4位獲得など、未知の速度領域でレースカーをコントロールして速さと存在感を十分アピールできたと思いますし、トップチーム内でさらに信頼関係を高めることもできました。他にも大きなプラスの収穫がありました。

またセッション中にスピンの経験や、決勝レースでのアクシデントも自分の経験値をさらにあげる為の収穫になったと思います。決勝レースにはかなりいい状態で臨め、感覚も十分につかめて上位争いに食い込める自信を得ることができ、トップ3フィニッシュは見えてきていただけに、いい順位でフィニッシュできなかったことは悔しいです。

しかし、次のチャンスにはさらに上のレベルで走れる大きな自信が得られました。最後に今回のチャンスを与えてくれたサム・シュミットをはじめチームクルー、スポッターのロジャー、スポンサーの皆さんに感謝を申し上げます。
【チームオーナー サム・シュミットのコメント】 彼は今日がデビューレース。このような超高速コースでのレース経験がゼロの中で最大限の仕事をしたと思います。慎重さと攻撃性を兼ね備えて、それをコントロールできるクレバーなレーススタイルはこのレースシリーズでは一番重要で、今回のレースでもトップ争いができる状態でした。

しかし、ルーキー故に絶対的な経験が不足していることも確かでした。今回のミスは彼のミスではありません。誰もペースカー走行時の走り方を彼には伝えていなかったのですから。今日、彼の走りを見て十分な将来性を確信しました。次の機会を非常に楽しみにしています。

TEXT&PHOTO: Keiichi Inamine

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