インディカー・シリーズ2024年シーズン、佐藤琢磨選手は低迷チームの助け舟となる?






インディカー・シリーズ、2024シーズンへのレギュラーシートが続々と埋まっていく中、9月15日現在で、まだ佐藤琢磨選手に関する確かな情報は伝わってこない。

9月15日時点でシートが確定していないのは、アンドレッティグローバルの4台目、デイルコインレーシングの2台。レイホールレターマンラニガンレーシングの3台目。

アンドレッティオートスポーツ改め、アンドレッティグローバルはエリクソン、ハータ、カークウッドの3台はすでに決定。マルコ・アンドレッティがインディ500のみ参戦するものの、レギュラーシーズンをフル参戦する4台目に関しては情報がない。

2023シーズンいっぱいでグロジャンとデフランチェスコの離脱と長年サポートを受けてきたDHLとのスポンサー契約が今年で終了。チームは持ち込みスポンサー無しで3台を走らせたいとしているが、オートネイションと、ゲインブリッジ以外で、どこがエリクソンのプライマリースポンサーになるかは現時点での発表はない。

チームオーナーのマイケル・アンドレッティは3台体制にする可能性はあるとの発言はあったものの、4台目を取りやめる明確な発言はしていない。


デイルコインレーシング(DCR)は、マルーカスのアローマクラーレンへの移籍が決定。複数年参戦の資金を得ているというスティングレイ・ロブの残留は未定。

ロブはエドカーペンターレーシングとも話をしているとされ、これまでマルーカスの参戦と共にチームと活動を共にしていたHMDモータースポーツはDCRとは離れてインディネクストに専念するという情報。

DCRは2022年は佐藤琢磨選手とデイビッド・マルーカスの2台体制で琢磨選手がロードストリートで2回TOP10フィニッシュしたほか、デトロイトでアウトサイドポールを獲得。オーバルでは5レースすべての予選でTOP10だったほか、ゲートウェイではチームの判断ミスで惜しくも勝利を逃して5位フィニッシュ。インディ500では強豪チームを相手に初日から3日連続でファステストを記録しての予選10位。決勝レースは折り返し過ぎまではエリクソンのすぐ後ろのシングルポジションを維持したものの、ピットでロスしたために燃費走行のギャンブルに切り替えて25位フィニッシュ。ルーキーだったマルーカスは予選では6回のシングルポジションと、決勝ではオーバルのゲートウェイで2位フィニッシュ。

2022年終了後に、マルーカス担当エンジニアだったロス・バンネルがチップガナッシに引き抜かれてディクソン担当エンジニアに抜擢。琢磨選手担当のチーフメカニックだったトッド・フィリップスはアローマクラーレンに引き抜かれてロッシのチーフメカニックに抜擢されるなどして、2023シーズンのDCRは大幅に弱体化。

チームオーナーのデイル・コインは2023シーズンも琢磨選手とマルーカスで行きたいと明言。しかし、琢磨選手は2023シーズンはフル参戦を諦めながらも、体制の充実したトップチームのチップガナッシレーシングでインディ500での3勝目を狙うことを選択したのは周知のとおり。

2024年はアンドレッティを離れたグロジャンがDCRに復帰するとの情報もあって、グロジャン自身もインディカーシリーズへの参戦継続を望んでいるものの、グロジャンはIMSAスポーツカー選手権のGTPクラスに参戦を開始するランボルギーニとの契約がすでにあって、状況は不透明。

若手とベテランの組み合わせを好むデイル・コインがチーム立て直しと、自身のインディ500初制覇を目指して佐藤琢磨選手に白羽の矢を立てるというのは合理的な流れ。

しかし、DCRが最低でも2022シーズンレベルのチーム体制を維持できるかどうか。琢磨選手のことを「リックウェアレーシングファミリーの一員だ」と評し、2022年の活躍を高く評価したリック・ウェアのサポートがどこまで体勢を立て直せるのか、それらが琢磨選手のモチベーションに働きかけるカギとなる。


”泥船”からの脱却を図るレイホールレターマンラニガンレーシング(RLL)は低迷した2022シーズン後に体制の大幅変更を実施。

2021シーズンまでテクニカルディレクターを務めてエンジニアリングチームを束ねていたトム・ジャーマンがチームを離脱してトヨタ・レーシング・デベロップメントに移籍。それに伴い、エドカーペンターレーシングから若手エンジニアのベン・シーゲルをルンガーの担当とし、リタイアするはずだったエディ・ジョーンズを慰留してハービーの担当として、2019年から在籍するベテランのアレン・マクドナルドをグラハムの担当とした。

しかし、トム・ジャーマンの抜けた影響は大きく、2022シーズンはグラハムは8回のTOP10を記録するも、表彰台は無く、ランキングは11位。ルーキーのルンガーは健闘して、8月のインディGPでの2位を含む7回のTOP10フィニッシュ。ハービーは最高位が13位でランキング22位と低迷。

チームは2023シーズンからIMSAのGTPクラスでBMWを参戦させるために、新しいファクトリーの開設とエンジニアリングの強化を目的として、F1の世界で20年もの経験を持つエンジニアのステファノ・ソルドをこれまで不在だったテクニカル・ディレクターの座に2022年10月に起用。

ソルドはRLL加入までの6年間をマクラーレンF1チームで車両パフォーマンスの担当のヘッドディレクターを務め、その前の10年間はレッドブルF1チームでエアロダイナミクス部門でのディレクターを担当し、セバスチャン・ベッテルの4年連続ドライバーズチャンピオンとコンストラクターズタイトルの獲得に貢献した実績を持つ。2014年からチームに在籍するニール・ファイフが管理するダンパープログラムですでに実績のあるRLLはエアロダイナミクスの開発に力を入れた。

さらに、2023年1月にRLLのインディカーとIMSAプログラムを統括するCOOとして、HPD(ホンダレーシングデベロップメント)の元副社長で、この2年間はチップガナッシレーシングでIMSAプログラムを担当していたスティーブ・エリクセンを起用。ソルドとエリクセンのという実力者2人の獲得で大幅な体制強化を図った。

しかし、ふたを開けてみると、2023シーズンはインディ500までの5レースでにグラハムとルンガーで二人合わせて5回のTOP10を記録するものの、チーム復活というまでには程遠い状況。さらに低空飛行だったハービーがインディ500予選に生き残るも、グラハムがハービーにバンプアウトされてまさかのインディ500予選落ち。

この結果、グラハム担当エンジニアだったアレン・マクドナルドがアレッサンドロ・ファリーナに交代となり、2019年から在籍するマクドナルドの名前はチームのリストから消えることに。

2023シーズン後半はグラハムが2回のポールポジションを獲得したほか、ルンガーがトロントでポールトゥウィンで初優勝するなどしたものの、他表彰台はグラハムの2位が1回だけで、ハービーは8月のインディGPを最後にチームを離脱。結局、オーバルは最後まで低迷し、オーバル門外漢のルンガーがゲートウェイで記録した13位が最高位。

2024シーズンはグラハムとルンガーの2人の残留は決定。2023シーズン終盤2レースで参戦したエストニア人のユーリ・ビップスが3台目の有力候補となっているものの、ビップスにはオーバル経験はなく、ビップスと同様にF2出身のルンガーはオーバルレースの経験が決定的に不足している状況。

2020年と2021年にRLLからフル参戦した2年間では。佐藤琢磨選手はオーバル10レース中、インディ500優勝を含む6回のTOP10フィニッシュを記録してグラハムの4回を上回った。RLLのインディ500とオーバルでの立て直しのカギを握るのは佐藤琢磨選手かもしれない。

※あくまでも、現状のチーム状況から考察した個人の見立てです。

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