アイオワでのレースーセッティング






1周=0.894マイル(7/8マイル)=1.4キロのアイオワスードウェイはシリーズ中で最少のレーストラック。しかし、昨年のレース1のポールスピードは178.199mph(286.7km/h)で00:18.0607秒と、実際は高速レーストラック。路面はバンピーなうえにドライバーには最大4.8Gもの横Gがかかります。

コース幅は60フィート(18.2m)で、フロントストレッチは1,075フィート(327.6m)でバンク角が10度あります。バックストレッチは869フィート(264.8m)でバンク角が4度。各ターンはプログレッシブなバンク角度を持ち、12度から14度あります。

今回のアイオワ・スピードウェイでのセッティングを解説するのは、ジョセフ・ニューガーデンのレースエンジニアであるルーク・メイソンです。ニューガーデンは、メイソンが担当した昨年のダブルヘッダーのレース1を含む、4勝をアイオワであげています。

【アイオワへ向けての事前準備は?】
アイオワは非常にユニークなオーバルトラックですが、基本的にはいつもと同じように準備を進めることが一般的です。ロードコースやストリートコースのレース前と、イベントに向けた準備作業はあまり変わりません。昨年のすべてのノートを見直したり、練習や予選などの映像を見直したりして、イベント全体の雰囲気をつかむようにします。実際に何をしていたのか、どのように対策したのかを再確認するためです。それから、初期のセットアップを決定し、クルーが車両を組み立て始めます。私たちのショートオーバルパッケージは基本的には多くの変更はありません。幸運なことに昨年のアイオワでは非常に競争力がありました。なので、アイオワに向けては、車両の細部を微調整し、自分たちのセットアップ範囲内で作業することが主要な課題で、新たなトライを試みることはありません。



【アイオワでのセッティングの特徴は?】
全てのオーバルトラックに必要な要素かもしれませんが、ドライバーが右後輪タイヤの動きに対して自信を持つことが、最も重要な要素だと思います。見た目ではそうには見えないかもしれませんが、タイヤは常に滑っており、滑り方を十分に把握することでドライバーはより自信を持ってアグレッシブに走ることができます。そのためには常に最大限のグリップを効果的に活用します。その結果、ドライバーは右後輪タイヤの動きを把握でき、ラップタイムの向上につながります。

【非常に路面がバンピーですが、足回りのセッティングはどうしますか?】
アイオワ・スピードウェイはかなりバンピーなコースで、出だしからスムーズに行くことはまずありません。バンプが多いほどタイヤの摩耗が多くなり、劣化も早く進むので、レースとしてはエキサイティングなものになります。個人的にはアイオワは再舗装してほしくないですね。ライドハイトやセットアップの方向、バンプに対応するためのセッティングは非常に難しいですが、それがこのオーバルの最大の個性だと思います。これまでもその状況は変わりませんでしたが、極端にコンディションが悪くなったりすることはありません。

【アイオワで最大限のグリップを得るためには?】
如何に妥協するかです。どれか一つに集中してセッティングしても結果は出ません。全てのオーバルコースで同じですが、空力的に安定したレースカーを作り、ターンの侵入でドライバーが自信を持てるようにしたいです。しかし、アイオワのバンピーな路面コンディションは、他のどのオーバルよりも妥協が要求されます。一般的にアイオワでは足回りをかなり柔らかく設定し、しっかりとバンプを乗り越えさせると同時に、バンプから受ける影響を最小限に抑えることが大事です。

【アイオワで一番クセのある場所は?】
ターン3と4の方がクセがあります。特にターン3と4の中間には大きなバンプがあって、走行ラインの選択も非常に重要です。レース中はインかアウトかどちらかのラインを選択し続けることはできません。トラフィック(集団)を抜けるためにはアウトやインへ頻繁にラインを変えながら、ラップスピードを維持しなければなりません。なのでレースカーは車両はインでもアウトでもどちらのターンでもバランスよく走れるようになっていなければなりません。どちらか片方を犠牲にして、もう一方を優先するということはできません。どちらかを優先した場合はその逆のターンでポジションを落とし続けることになります。

【予選用セッティングと決勝用セッティングはどう違いますか?】
予選後に車両保管が行われるので、単独で2周だけを走る予選と、フルタンクで50周以上の走行が必要なレースの両方で完璧になるようなレースカーを作ることは不可能です。予選のスピードはレースペースよりもはるかに高く、特に予選が進むほどが路面コンディションがよくなっていきます。しかし、決勝を見越してライドハイトは非常に高くなるので、予選終了後に車両保管が行われるルールの下では、予選順位を優先するために決勝セッティングをわずかに犠牲にする人がいる一方で、予選スピードは多少犠牲にして、ロングスティントでのパフォーマンスを優先する場合もあります。

アイオワでは、ロングスティント全体でのバランスの一貫性が非常に重要です。右フロントタイヤの摩耗が早い車はアンダーステアに悩まされ、ドライバーはスロットルを大きく戻さなくてはならなくなります。右リアタイヤが摩耗すると、ターンのエントリーで挙動が不安定となり、コーナーでのスピードを維持できなくなります。スティント全体で一貫性のある車を確保するために、セットアップを常に微調整していくことが非常に重要です。それと同時に、ウェイトジャッカーやアンチロールバーなどのツールの役割をすべて把握しておく必要があります。これらのツールは、ドライバーがレース中に操作することでバランスの変化に対応し、タイヤが摩耗してラップタイムが落ちていく中で、車を適切な状態に保つってロスを最小限さえることに役立ちます。

【アイオワでの勝利のために必要なことは?】
最初に重要なのは、ドライバーがレースカーに自信を持っていることです。それが一番の要点だと思います。ジョセフは非常に優れたドライバーであり、彼がエドカーペンター・レーシング所属時に乗っていたレースカーか、チームペンスキーのレースカーかに関係なく、彼が何が必要なのかや、車がどのように反応する必要があるかを理解しています。彼が車に求めるものを理解することで、私の仕事は非常に楽になります。プラクティスセッション中はレースカーは彼任せで、路面のグリップレベルの変化に合わせて彼がレースカーをアジャストさせていきます。

そして今年はタイヤが昨年とは若干違うのですが、車のバランスを適切な範囲に保ち、タイヤをなるべく摩耗させないようにしなくてはなりません。タイヤがバランスを崩さないように常に注意しないと、前輪でも後輪でもタイヤが一瞬でもグリップを失うと、もうリカバリーはできません。決勝レースでは、バランスの取れた車両でタイヤの摩耗を抑えられれば、ぐんぐん前に出ることができますが、タイヤがフレッシュなうちの10周だけで全速力で突っ込んでいっても、突然ペースが落ちて、50周後には2周遅れになることもあります。

【アイオワのレースはいつも猛暑ですが、気温はどう影響しますか?】
気温はどのレーストラックでも影響を及ぼしますが、アイオワのバンピーな路面状況によるタイヤの劣化は、さほど気温に影響されるとは思いません。昼間のレースは気温が高いのでタイヤ劣化がやや大きくなり、徐々にラップスピードは遅くなることがあります。一方で夜のレースでは、平均速度は速くなり、タイヤの劣化は若干小さくなる場合がありますが、これらの違いはレースの進行に大きな変化をもたらすほどのものではありません。タイヤの劣化とともにラップタイムも落ちていくので、燃料がくなるまで引っ張るドライバーはまずいまません。また、タイヤの劣化の影響が大きすぎるので、燃料よりもタイヤの寿命によってピット戦略が優先されます。なので、アイオワでは、他の場所と比べて気温自体はあまり重要ではないと言えるでしょう。

【アイオワでのハンドリングバランスで大事なことは?】
明確な答えはありませんが、どのドライバーにとっても、ターンの入り口での右リアタイヤの安定性に自信を持つ必要があり、その結果、速度を維持したままターンに進入していくことができます。ジョセフのドライビングはかなり攻撃的だと思うので、まずは右リアを安定させることから始めます。その一方で、ただ安定させすぎるだけではアンダーステアになっていってしまうので、車が十分にターンインするようにして、ジョセフの運転の幅に対応できるようにします。一般的に、ラップタイムを追求のするためには、少しオーバーステア傾向の方が良いのですが、オーバーステアは突然レースカーのバランスを失うリスクがあります。私たちは比較的ニュートラルなバランスに保ち、ジョセフがが必要に応じて車の中のツールを使ってバランスを調整できるようにしたいと考えています。

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