アイオワダブルヘッダーでのインディカーのハイブリッド効果を検証






ハイブリッドパワーユニット導入後初めてのオーバルレースとなったアイオワでのダブルヘッダーレース。レース1はリーダー2人でリードチェンジは1回。レース2はリーダー3人でリードチェンジが6回あるもいずれもピットストップによるもので、コース上でのリードチェンジはゼロ。

当初は鳴り物入りで導入されたハイブリッドPUの成果で、これまで以上にエキサイティングなバトル見られると期待も大きかったものの、アイオワ2レースを見る限りでは動きの少ないレースとなっています。なぜ、これまでのパッシングは無くなてしまったのか、ハイブリッドPU導入との因果関係を評価してみます。

【ハイブリッドPUの導入による重量増と重心変化】
使用すると60馬力アップも、ユニットの装着によって車重は約46kg(101ポンド)増加しています。重量増に対しては新型エアロスクリーンで約3キロの減量。アルミニウム合金製のベルハウジングとXトラック製のトランスミッションケースをマグネシウム製に変更することで35ポンド(約18㎏)の減量が図られた結果、最終的には101ポンドの増加に抑えられました。2020年からエアロスクリーンが導入されて重心が大きく代わりましたが、今回のハイブリッドPU導入で重心は2019年以前とほぼ同じに戻ったとされています。

【重量の46kg増加にタイヤの仕様を変更】
インディカーにタイヤを供給するファイアストンはインディカーの車重増加に対応して、今シーズンから耐久性を上げたタイヤを導入しています。ハイブリッドPUの導入が見送られたシーズン前半の8レースでは逆にタイヤの耐久性が良すぎて、タイヤのデグラデーション(劣化)が大幅に減ったほか、ハードタイヤとソフトタイヤのキャラクターの差も小さいものになっていました。例年では50周以上の走行では1周の平均速度が15mphは落ちていましたが、今回は10mph弱ほどのドロップでした。

【アイオワでのタイヤスペック】
ファイアストンはレースウィークエンド直前にタイヤスペックの変更をアナウンス。6月のテストで使用されたタイヤと比較して以下の変更を発表しています。
14セット支給。スタッガーは0.5インチ=1.27cm。
インサイドはコンストラクションとコンパウンドは昨年と同様。
アウトサイドは再舗装によるグリップアップでの発熱対策でコンストラクションを変更。
コンパウンドも熱対策を行い昨年よりも若干摩耗が早い傾向。との情報。

【コースの再舗装の影響】
2006年完成のアイオワスピードウェイは今年初開催のNASCARカップレースを前に5月に部分再舗装工事を実施。ターン1-2とターン3-4のアスファルトが再舗装されました。これまでにはターン3-4側に大きなバンプが連続し、これがレースカーのセッティングに大きな影響を与えてきたばかりか、走行ラインにも幅を与えてきました。しかし再舗装後はバンプが無くなっただけではなく路面のグリップが向上してます。
1周18秒ほどのアイオワスピードウェイにおいて再舗装部分の走行時間は約11秒(約60%)にも及びます。







【ハイラインプラクティスを実施】
アウトサイドレーンのグリップ状況を改善するために、金曜日午後の90分間のプラクティスセッションの前に2グループに分けて15分間ずつ行われるハイラインプラクティスを実施。各車はターンにペイントされた白いマークの外側を走行してアウトサイドのラインにタイヤラバーを乗せる走行を実施。各車にこのセッション専用のタイヤ1セットが供給されています。







【ハイブリッドパワーユニットの使用時間】
■アイオワスピードウェイ1周で使用できる最大回生エネルギー量は105kJ/LAP
■105kJ/LAPは時間にして約3秒(1周のラップタイムの18%)
■ESS(蓄電池)の充電100%では約5秒間の回生エネルギーが使用可能
■ESSがフル充電の場合は1周につき1秒強(約20%)余る計算
■ESSのフル充電には1周(減速2回分)を要する

【予選でのハイブリッドのトラブル】
ジャック・ハービーはハイブリッドシステムが動作しないとして予選計測を2回やり直しに。コルトン・ハータも動作しなかったとして、レースコントロールに予選の再計測を許可されるも、再計測は見送っています。

【予選でのハイブリッドの効果】
スコット・マクロクリンはハイブリッドを使用して
1周目=17.1624秒 187.526mph(予選2位)
2周目=17.0966秒 188.248mph(ポールポジション)
コルトン・ハータはハイブリッドが使用できずに
1周目=17.1506秒 187.655mph(ポールポジション)
2周目=17.2125秒 186.980mph(予選4位)
という結果で、マクロクリンは2周目はドロップせずに逆に速度がアップしました。逆にハータは4番手にドロップし、このことからもハイブリッドパワーは予選ではスピードアップに有効であったと推測されます。

【まとめ】
結果的にこれまでは、タイヤグリップの大きなドロップによるスピードダウンの中で、数周かけてのサイドバイサイドのバトルで順位変動が起きてきたアイオワでは
①再舗装による路面状況の好転でタイヤのドロップとスピードダウンが少なくなり、各車の速度差が生まれにくくなった。
②1周につき3秒の60馬力のパワーアップでは小さい速度差の中ではパッシングには使用時間が短すぎる。
と、以上の2点が想定されます。

2レース共にもらい事故でクラッシュに巻き込まれたエド・カーペンターはハイブリッドPUの導入を酷評するコメントをしていましたが、その一方で、サンティーノ・フェルッチやグラハム・レイホール、ジョセフニューガーデンは多くのアウトサイドパスを見せています。

【シーズン今後のレーストラックでの1周あたりのハイブリッド使用量は】
次回のトロントではハイブリッドエネルギーの使用量は1周あたり305kJ(約8秒強)が設定されます。8秒間はバックストレッチでのアクセル全開時間となる約10秒間をほぼカバーできます。トロントのエキシビションプレイスの路面は大規模な再舗装工事は無く、おおむね昨年同様の都面状況となります。
そのあとのショートオーバルのゲートウェイとミルウォーキーでは135kJ(約4秒弱)の使用量が設定されてます。

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