ハイブリッドパワーユニットがインディカーにもたらす走り方の変化






今週末にミッドオハイオ・スポーツカーコースで開催されるホンダインディ200で、2.2リッターV6ツインターボ・ハイブリッドパワーユニット(PU)を搭載したインディカーが実戦デビューします。

ハイブリッドPUが回生したエネルギーの再使用は、既存のプッシュトゥパス(P2P)システムと同様にボタンを押すことでモーターを作動(ディプロイ)させます。ロードストリートコースでは、ハイブリッドPUのエネルギーの再使用をP2Pと併用することができます。どちらにも使用時間が設定され、P2Pは1回あたりの最大使用時間とレース中の合計使用時間、ハイブリッドPUのエネルギー再使用時間はレーストラックの1周の長さに基づいてラップごとに再使用できるエネルギー量が規定されることになります。

レース中のエネルギー回生方法は、ブレーキング中またはアクセルペダルを戻した時の自動回生と、ステアリングホイールのパドルかボタンを使用した手動操作によるエネルギ回生再生の2種類になります。

ハイブリッドPUによって回生されたエネルギーはディプロイボタンを押すとモーターによるパワーアシストが機能して約60馬力アップ。P2Pを併用した場合は、合計120馬力以上のパワーを追加発生することになります。馬力が増加すると、レースカーのハンドリングバランスに影響を及ぼします。

そこで重要なのは、モーターによるパワーアシストを使用すると、ESS(エナジーストアーシステム=蓄電池)の電力が減っていくことです。ドライバーは、継続的にパワーアシストを使用するためにエネルギー回生をしてしっかりと充電しておく必要があります。

ただし、ハイブリッドのパワーアシストを使用するか否かはドライバー次第となるので、ショートオーバルでは、エネルギー回生やパワーアシストの使用によるハンドリングバランスの変化の影響やタイヤの摩耗を懸念するケースが発生する可能性があります。状況によってはハイブリッドPUをあえてしないケース場合もエンジニアの判断によってはありえるかもしれません。

2015年にミッドオハイオで優勝しているグラハム・レイホールは、タイヤ管理も重要な要素になると指摘しています。馬力の増加によってリアタイヤへの負担が増え、タイヤの使い方やドライビングスタイルに変化がが出る可能性があり、ドライバーはハイブリッドシステムを戦略的に使用する必要があることを示唆しています。

ハイブリッドPU導入による変化は決勝レースだけではなく予選にも及ぼすことが考えられます。モーターによるパワーアシストにより、リアタイヤの摩耗がこれまで以上に進む可能性があり、予選中の計測周回数が1周のみの一発勝負になるかもしれません。

インディカーシリーズは、ロードコースとストリートコースでノックアウト予選形式を採用し、最初の 2ラウンドでは、少なくとも12台以上の車がコースインします。1周が3.6Kmのミッドオハイオ スポーツカーコースでは、計測ラップのために十分なスペースを確保することが困難でした。ハイブリッドPUでモーターアシストを使用した場合は、タイヤへのに負担が大きくなり、タイヤのグリップを失い始める前に如何にクリアな状況で1周を走り抜けられるかが重要になります。

アンドレッティ・グローバルのマーカス・エリクソンは「システムの使い方でドライバー間に大きな差が出るような気がします。システムの機能と有効な使い方をしっかりと理解する必要があります。レーストラックごと、チームごと、エンジンメーカーごとに、有効な使い方やテクニックに差が出ると思います。それは非常にユニークで面白いと思います。ハイブリッドPUにはエネルギー回生とディプロイの両方に様々な設定があるので、レース中にサイドバイサイドの状態でタイヤの摩耗も考えながら、これらのシステムを駆使することはまさに頭脳戦になると思います」とコメントしています。

コメントを残す