AMRインディカーセーフティーチーム






インディカーシリーズでは1990年代から専任のセーフティスタッフとドクターを全戦に帯同させ、レース現場での安全レベルを革命的に引き上げることを実現しました。

現在はアメリカ国内で救急車や救急ヘリによる急患移送などの医療輸送サービスや、各地域での災害対応などを管理するAmerican Medical Response Inc.(AMR)がサポートしAMRインディカーセフティチーム(以下、AMRセーフティチーム)と言う名称で活動を行っています。
AMRセーフティチームはインディカーでメディカルディレクターを担当するジュリア・バイザー先生他、約40人のスペシャリストで構成され、最新機材と十分な体制の下でインディカーシリーズ全戦に帯同しています。

各スタッフは医療、消防、救助救命などの現場で平均20年の実務経験を持つスペシャリストで消防科学や防災士などの学位や資格をもつスタッフも含まれ、各レースイベントでは総勢40人ほどのメンバーの中から消防士14人、救急救命士3人、看護師2人、整形外科医と精神外科医の医師2人を現場に派遣。レース現場ではメンバーはファイアースーツとヘルメットを着用し、様々な救助機資材が搭載された5台のセーフティビークルに分乗してコースサイドに分散してスタンバイしています。

イベント中はそれぞれのレーストラックが派遣する地元の消防スタッフやメディカルスタッフ、レッカー車スタッフなどと事前に協議を行い、連携して活動します。

セーフティビークルは4台のピックアップトラックと1台のメディカルカーで構成されています。各車両の装備は以下の通り。



セーフティ1号車 Chevrolet Silverado 1500 Crew Cab




セーフティ2号車 Chevrolet Silverado 1500 Crew Cab




セーフティ4号車 Chevrolet Silverado 1500 Crew Cab




■イエローライトシステム
■イエロー発生で自動的に撮影を開始するリモコン360度ドライブレコーダー
■後方ビデオカメラ
■巻き取り式牽引ストラップ
■ストロボライト 
■ホルマトロ製油圧式救助資機材
■ストラップ付脊椎固定バックボード
■首を安定させるための調整可能な頸部カラー
■気道確保、止血、骨折手当のための基本的な医療機器
■オイル清掃道具
■金属デブリ収容器

4号車は2022シーズンより導入され、このセーフティチームの創設者の一人であるカール・ホートン氏の名前が付けられています。



セーフティ3号車 Chevrolet Silverado 1500 Crew Cab




■油圧救助資機材の搭載は無し
■オイル処理剤136㎏
■オイル処理作業の為の油圧式ブラシ
■ジェットブロワー



ドクターカー Honda Pilot




■衛星TV受信機セット
■データ受信用ラップトップPC
■イエローライトシステム
■救急救命医療機器

アクシデント発生直後の各車両の役割はドクターカーとセーフティ1号車は事故車両へ直行してドライバーの安否確認と救出保護に当たり、セーフティ2号車は事故車の衝突地点の破損状況などを確認。セーフティ3号車は周辺前後のコースコンディションを見て、オイル、燃料、破片などの飛散がないかどうかを確認します。







レースコントロールはセーフティビークルから送られてくる動画と無線交信などから判断して、救急車やレッカー車、ジェットドライヤー車、その他の物資、スタッフを乗せた車両の出動を指揮します。

また、ドクターカーには衛星TV受信システムが搭載され、車内でレース中継映像を監視することができ、ネットワーク接続されたPCでレースカーの衝突時のデータや、ドライバーのイヤピースに仕込まれた3軸衝撃センサーが感知したデータを受信することで、ドライバーへのダメージを推定して最適な救助資機材を選択して現場で直ちに救助活動に移れるようになっています。

アクシデント発生時もシングルカーアクシデントから最大6台のマルチカーアクシデント発生まで様々なケースで役割分担を発揮できるように継続的にトレーニングが行われ、さらに大規模なアクシデント発生にも備えて、地元レーストラックのセーフティスタッフや消防スタッフなどと連携するための訓練や協議も毎回実施されています。







ドライバーの救出訓練には、救助トレーニング用のモノコックが使用され、レースカーがタイヤバリア―に乗り上げたり、横転した状況でも迅速な救出作業ができるように訓練が行われます。











なかでも重要なのは、マルチカーアクシデント発生時のトリアージで、迅速に救助活動ができるようにするために、アクシデント発生時に意識があるドライバーはその意思表示をするためにレースカーのステアリングホイールを自ら外してダッシュボード上に乗せることが義務付けられています。以前はヘルメットバイザーをあげることも義務化されていましたが、現在は火災発生時などを考慮してバイザーは上げなくてもよいことになっています。

そして、2次災害を防ぐために、事故車両のドライイバーは自ら勝手に車外に出ることは許されず、上記の意思表示を行ったうえでセーフティスタッフの到着を待たなければなりません。ただし、煙が視認できるなど、火災の危険性がある時はこの限りではありません。

もし、セーフティチームが頭を下げたまま動きのないドライバーや火災の兆候を発見した時は最優先で救助活動が行われます。

かつてはアクシデント発生から20秒以内に当該ドライバーに到着して救助活動を開始、アクシデント発生から3分以内にケアセンターへの搬送終了と言う目標を掲げて活動が行われてきましたが、現在でもオーバルトラックでは実際にはアクシデントを起こしたレースカーが停止するのとほぼ同時セーフティスタッフがドライバーに駆け寄る姿を見ることができます。







2022シーズンまでインディカーのメディアディレクターを務めてきたジェフリー・ビロウ先生が勇退し、ジュリア・バイザー先生が就任。バイザー先生はレースシリーズやレーストラックにおける初の女性責任者と言うことになります。




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