変見自在?偏見自在⑤ トリプルクラウン

世界三大レース=トリプルクラウンと言えば、「インディアナポリス500、ルマン24時間レース、モナコグランプリ」。

今年はこのうちのインディ500とルマン24時間レースの2つのみが開催されたが共に日本人ドライバーが制する結果になった。

佐藤琢磨選手はインディ500での2勝目。中嶋一貴選手はルマン24時間レース3連覇という偉業達成で日本人ドライバーが共に世界の頂点に立ち続けるという日本のモータースポーツ史上かつてない状況となっている。

もし現役日本人F1ドライバーがいて、モナコグランプリも制していればと思うと夢は大きく膨らむ。

「トリプルクラウン」と呼ばれる偉業は様々な形でスポーツ界に存在する。

アルペンスキーでトリプルクラウンと言えばW杯もしくは五輪での「回転、大回転、滑降」の3冠同時獲得で、これまでにトニー・ザイラー(AUT)とジャン・クロード・キリー(FRA)の二人だけ。

ゴルフのトリプルクラウンはシングルシーズンでの「マスターズ、全米オープン、全英オープン」3大会の制覇で1953年のベン・ホーガンのみ。

「マスターズ、全米オープン、PGAチャンピオン」と言う括りを含めると2000年のタイガー・ウッズもこれに相当する。それでも歴史上この二例しか達成はない。

グランドスラムと呼ばれる「マスターズ、全米オープン、全英オープン、PGAチャンピオン」の4つのタイトルをキャリアの中で獲得したのはジェネ・サラザン、ゲーリー・プレイヤー、ベン・ホーガン、タイガー・ウッズ、ジャック・ニクラウスの5人。

テニスでは「全豪、全仏、全英、全米」4大大会のグランドスラムとなり、キャリアの中でグランドスラムを達成したのは男子シングルスで8人、女子シングルスで10人と、比較的大人数となる。

日本の競馬での三冠と言えばJRA3歳クラシック三冠の「皐月賞、 東京優駿(日本ダービー)、 菊花賞」で、達成馬は7頭。

このようにスポーツ界には様々な三冠やグランドスラムがあるが、モータースポーツでのトリプルクラウン達成はたった一人しかいない。

グラハム・ヒルはモナコグランプリで5勝(1963–65, 1968, 1969)し、インディアナポリス500には1966年、ルマン24時間レースは1972年に優勝してトリプルクラウンを達成。

この3レースともに参戦したことがあって、その中で1勝でも上げたことがあるドライバーは19人。

そして現役ドライバーとしてトリプルクラウン達成の可能性があるのは現在は二人のみ。

ファン・パブロ・モントーヤは2000年にインディ500で優勝。F1転向後の2003年にモナコグランプリを制して2015年にはインディ500での2勝目を挙げてトリプルクラウンに王手をかけている。

モントーヤはインディカー、フォーミュラ1、NASCARカップと3つのメジャーカテゴリーを制している3人のうちの一人でマリオ・アンドレッティ、ダン・ガー二ーと肩を並べている他、デイトナ24時間レースでは3回の総合優勝があって、トリプルクラウン達成のポテンシャルを十二分に持っている。

今年(2020)のルマン24時間レースにLMP2クラスから参戦したもののDNF。2018年にもLMP2クラスで参戦し、その時はクラス3位で表彰台に乗っている。

2015年オフシーズンにはWECのルーキーテストに参加してポルシェのLMP1カーをドライブしたがポルシェでのルマン24時間レース参戦は叶わなかった。

トリプルクラウン達成を掲げて今年のインディ500に参戦したフェルナンド・アロンソは2006年07年とモナコグランプリ2連勝。ルマン24時間レースには2018年19年と中嶋一貴選手(今年で3連勝達成!)と共に2連勝し、あとはインディ500での勝利を狙っている。

2017年のインディ500デビュー戦では琢磨選手の横からとなる5番グリッドからのスタートで、一時はレースをリード。結局エンジントラブルでレースを終えているが、トリプルクラウンを十分に達成できるポテンシャルを大いに見せつけた。

そんなアロンソだが、2019年インディ500ではマクラーレンから参戦したものの、インディ500での実績がほとんどないに等しいカーリンとのジョイント参戦であえなく予選落ち。2020年インディ500ではポールポジション獲得の実績があるシュミットピーターソンを買収したマクラーレンから参戦したが、シボレーエンジンではホンダエンジンの優位性に太刀打ちできなかった。

ルマン24時間レースを統括するACOはレースカーレギュレーションを改正してアメリカのスポーツカーレースの最高峰のIMSAスポーツカー選手権のDPiクラスをベースとした「LMDh」クラスの新設でIMSAと合意した。

つまり、IMSAに参戦するキャデラック、アキュラ、マツダは事実上ルマン24時間レースに参戦可能となる。

今シーズンまでアキュラはペンスキーと組んでDPiクラスに参戦してきたが、アキュラはペンスキーとの2021年以降の契約をしないことを発表。代わってデイトナ24時間レース総合優勝連覇をしているウェインテイラーレーシングとGTクラスでの実績があるメイヤーシャンクレーシングと契約することを発表。これまでよりも参戦活動を拡大する方向にある。

史上二人目のトリプルクラウン達成はあるのか?どちらが先になるのか?

モントーヤもアロンソも年齢的に二人とも今後残された時間は長くはない。
個人的には2021年に同時達成を期待したい。

そんな夢の大記録を後押ししたのは共に「夢のパワー」であることを願わずにはいられない。

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