思い切ってダウンフォースを減らしてみると・・・・


以前にJRヒルデブランドとECRのエンジニアが考察したものをまとめます。



■F1よりも大きいDF



2017シーズンまでのインディカーは200mph(322kph)で約7000ポンド(3175㎏)のDFを発生する。これは現在のF1レギュレーションよりも大きく、100mph(160kph)でもインディカーの車重をを超える1600ポンド(726㎏)を発生する。



■これまでのレースカーはDFが多すぎる



2017シーズンまでの豊富なDFはレースカーの安定性を増加させる。その結果レースカーは操縦しやすいものとなるが、DFに頼らなければレースカーの操縦性は難しいものになりレースはより面白いものになる。



■DFを4割削減させた場合



たとえばソノマレースウェイにてDFを 6500ポンドから4000まで約4割削減した場合、DFばかりではなくドラッグ(空気抵抗)も同等削減される。それは80年代のインディカーもしくは現在のNASCARカップカーと同等のDF量になる。その結果、すべてのコーナーリングスピードは5mph~10mph(16kph)程さがり、高速コーナーほどその速度は大きく下がる。ブレーキング距離は最大30mほど増加する。ストレート速度は13kphほど増加するがラップタイムは2秒遅くなる。



■2017シーズンまでのインディカーは最適セッティングの幅が狭い



これまでのインディカーの速度はスペック上限界の速度域に達し悪影響が出始めている。そのためにセッティングを外した場合のパフォーマンスは急激に悪化する。フェニックスでのDFを3000ポンドにした場合はただスピードが遅くなるだけではなく、ドライバビリティも悪化し、コーナーリング中にレースカーはスライドし挙動は大きく乱れる。



■インディカーの特性



ダウンフォースを削減するとはオーバルではピーキーな特性となり、ウォールの餌食になりやすくなる。



■一方で見ごたえは増える



上記の結果、DFを減らすと言うことを聞かないレースカーをコントロールするというドライバーのアクションが可視化されることになる。これはレース観戦の醍醐味である。



■DFとメカニカルグリップ



トラフィック内でのハンドリングバランスの良し悪しはメカニカルグリップによるところが大きいが、レースで1スティントを通じてハンドリングバランス変化が大きい場合はダウンフォースを増やして対応する必要がある。しかしDFを増やすと直線スピードは落ちる。十分なメカニカルグリップが得られている場合はDFレベルを減らすことができる。その場合は直線スピードがより伸びる。



■ドラッグとDF



トラフィックで速いレースカーは単独走行では遅くなり、単独走行で速いレースカーはトラフィックでは遅くなる傾向がある。決勝レースでは自分のレースカーのこの特性を見極めて、長いレースでどのようなバランスにする必要があるかをしっかりと見極める必要がある。



■ショートオーバルとの比較



スーパースピードウェイでのDF削減はショートオーバルでのそれ以上の効果をもたらす。SSWではコーナーリング速度が高いためにDF(=ドラッグ)の削減はコーナー中では大幅なスピードダウンを余儀なくされるが、ストレートでの最高速度により高くなる。インディ500ではこの効果は計り知れない



■馬力とスピード



DFを削減した場合は馬力を上げてもスピードアップには直接つながらない。多くのレーストラックではコーナーリングで減速が必要になる。



2017シーズンと比べてダウンフォースが2割削減となる今シーズンは昨年よりもコーナーリング速度とトップスピードの差が大きくなることを意味しています。さらにスライドによるタイヤの摩耗の増加でタイヤの減りによるラップタイムの落ち込みがさらに大きなものとなります。



その結果、タイヤの使い方によってはスティント終盤には速度差が生まれるのと、グリップレベルの差で走行ラインの幅が広がる可能性が出てきます。



そうなると、コントロールしやすいマシンは速度を維持しながらもインサイドを走ることができ、タイヤの減りに悩まされているマシンはイン側をキープできないうえにコーナーリング速度もより低下します。 要はかなりストックカーレースやスプリントカーレースに近い動きになるのではないでしょうか。

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