インディカーの気温対策

気温の変化に対してインディカーはどのように対処するのでしょうか。まず気温が上がると空気は膨張して密度が低下します。つまり車体が受ける空気が薄くなるということです。ということはウイングにあたる空気も薄いものとなり、その結果ダウンフォースが低下します。その対策としては前後のウイングのメインプレーン(主翼)のアングルを増やします。


フロントウイング同様にリアウイングもレース中に角度を調整できるようになっています。


そして、ウイングの後縁に”ガーニーフラップ(ウィッカービル)”と呼ばれるパーツを取り付けてダウンフォース量を増やします。一般的にはウイングの角度を立てると、ダウンフォース量は増えますが、その分ドラッグ(空気抵抗)も増えてトップスピードが落ちるという弊害が生じます。ガーニーラップはドラッグの増加を最小限に抑えて最大限のダウンフォースを得る効果があります。


次にエンジンの冷却効果を考えなくてはなりません。サイドポッドの中には左側に冷却水を冷やすラジエータ、右側には潤滑油を冷やすオイルクーラーがあり、コクピット下の両サイドにある「エアインレット」から空気を取り入れて冷却して、その空気を後方から排出しています。



この冷却のための空気もドラッグとなってスピードに影響を及ぼすので、エアインレットとエアアウトレットは複数のシャッターをつかって開口部の大きさを気温に合わせて最小限にできるようになっています。2012年のインディ500で予想以上の気温上昇に対してエアインレットの開口部を小さくしすぎて、水温上昇や油温の上昇に見舞われるチームが多数ありました。
 これに対してはエアインレットのシャッターを取り除けばいいのですが、その分空気抵抗は増えてトップスピードはダウンします。そこで、シボレーエンジン勢は燃料のミクスチャーを濃くして、その気化熱で水温上昇を抑える手段に出ました。燃料を濃くした分だけ燃費の悪化は避けられません。トップスピードの維持と引き換えに燃費の悪化を選択したシボレー勢の結果はまだ記憶に新しいことだと思います。

2件のコメント

  1. わかりやすい解説をありがとうございます!
    なかなか素人には理解することが難しい物理的なことを、理解できてありがたいです。
    週末の放送、楽しみにしています!
    長丁場ですが、稲嶺さんスタッフの皆さま、頑張って下さい。応援さています(^-^)/
    1. Kaoriさま、コメントありがとうございます。
      他にも質問がありましたらお寄せくださいませ。
      今後もよろしくお願いいたします。

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